【バリアブル地獄の舞台裏】5,000件の印刷と格闘した話

印刷の現場から
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こんにちは。印刷現場でDTPオペレーターをしている者です。
今回は、思い出すだけでちょっと胃が痛くなる…でも今となっては「よく乗り越えたな」と思える、そんな案件の裏話を残しておこうと思います。

◆案件の概要:バリアブル印刷×三つ折り×ラベル×封入×発送

内容を聞いただけで「ヒェッ」となりそうなこの案件、
バリアブル印刷(1件ずつ内容が異なる印刷物)を約5,000件分。

【仕様一覧】

  • バリアブル印刷・宛名ラベル作成(1件ごとに内容が異なる)
  • 三つ折り加工
  • 宛名ラベル貼付(外注)
  • 封入・封緘(外注)
  • 郵送手配

という、ミスが許されない高リスクな仕様でした。
しかも納期はギリギリ。工場に依頼する余裕なんてありません。

◆データ作成時点で地獄の入り口

「流し込みすれば簡単にできるでしょ」と思っていた自分を全力で止めたい。

5,000件のデータをInDesignに取り込もうとした瞬間、
PCは沈黙。「……考えさせて」とばかりにフリーズ。

一度に流し込むと無理があると気づき、手順を変更。

複数ファイルに分けたり、レイアウトの軽量化を試みたりしながら進めていきました。
途中何度も「もうだめかも…」と思いましたが、保存・検証・祈りを繰り返して、なんとかデータ完成。

◆印刷中の戦い:順番命の三つ折り地獄

印刷工程でも新たな問題が。

今回の印刷物は、宛先順に並んだまま三つ折りされる必要があるという条件つき。
順番がズレる=宛先がズレる=全部やり直し、という恐ろしい仕様です。

通常なら「印刷しながら折り」を考えるところですが、時間的にも機械的にもそれは不可能。
悩みに悩んで、先輩からもアドバイスをもらい、順方向・上向きで印刷して、そのまま紙折り機に通すという作戦に決定。

※普通に印刷すると印刷面が下向きになりますが、上向きで印刷。順番に印刷するので仮に10番までの番号の振られたデータを印刷すると、一番下が1番、一番上が10番になります。今回はそれをその順番のまま紙折り機に通すことで一番下が10番になるようにしました。

ところが途中で折り方を誤ってしまい、順番は合ってるけど折り方が逆という痛恨のミス。
ここからの修正でまた時間を取られ……地味に心を削られました。

◆5,000件のリスクに1人で挑む

途中までの作業は、ほぼ1人で進行していました。
トラブル時のリカバリーも考慮して、500枚ずつに区切って管理。
効率も大事ですが、それ以上に「崩れた時にどうするか」を想定して動いていました。

今考えると、一人でこの仕事量おかしくない!? って笑いたくなりますが、
当時は必死で、「とにかく無事納品する」ことしか頭にありませんでした。

◆納品完了、そして訪れる静寂

印刷・折り・ラベル貼りまでを終え、外注先に渡して封入封緘・郵便局へ持ち込み。

やっとのことで一区切りついた頃、
先方から「配送先に届き始めたようです」と連絡が入りました。

その時の安心感といったら…もう、全身の力が抜けるような感覚でした。
やっと終わった。無事届いた。ありがとう、全ての印刷機たち……。

◆この経験で得たこと

この案件で実感したのは、

  • 大規模バリアブル印刷は、技術より段取りとリスク管理が命
  • 「一度でうまくいかなくて当たり前」くらいの心構えが必要
  • 作業を分割し、エラー発生時の影響を最小限にすることが何より大事

…そしてもうひとつ、
次にこの規模の案件が来たら、全力で断ろうという教訓も得ました(笑)

◆最後に:現場で闘う全ての人へエールを…

誰かの「ポストに届いていた」という日常の裏に、こんな現場のバトルがあること、ほんの少しでも伝わったら嬉しいです。

そして、これを読んだ誰かが――
明日の“地獄案件”を少しでも冷静に乗り越えられますように。

印刷は奥深い。そして時々、過酷。
でも、だからこそ面白いと思える瞬間も、確かにあるのです。



後日談です……。
断ろうと決心したはずなのに、何故か私は8,000件の流し込みをしています……。

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