戻ってきたカードは、きれいにすじだけ入っていました。
……そう、“折られて”いなかったんです。
営業が持ってきた指示書を見た瞬間、胸の奥に小さな違和感が灯りました。
「すじ押し」だけ? 折りの指定は……?
けれどその違和感を、忙しさの中で押し込めてしまったんです。
「これ、本当に“折りまで”やってくれるのかな?」
でも、営業は自信ありげに言いました。
「印刷所に電話して確認したから大丈夫!」
それを聞いて、私も安心してしまったんです。
その時は、まさか1000枚の厚紙を手折りすることになるなんて、
夢にも思いませんでした。
1. 事件のあらまし:仕様書に潜む罠
発注内容は、厚めのカード紙を使った2つ折りカード。
作業内容は「すじ押し+2つ折りまで」。
普段からお願いしていたネット印刷会社への発注だったので、営業も特に疑わなかったようです。
ところが、実際に戻ってきたのは……
見事にすじ押しだけされた状態のカード。
一見すると折り目がついているので問題なさそうですが、
納品先は「折り済みでの納品」が必須。
つまり、“折り”がされていない時点で納品NGなんです。
ちなみに、なぜすじ押しが必要だったのか。
厚紙や濃い色の印刷物を折る際に下記画像のように仕上がりが全然違います。
引用:ACCEA「背割れについて」より
2. 現場の地獄、開幕
そこから先は、想像どおりの展開です。
1000枚の厚紙を、スタッフ総出で手折り。
厚紙なので1枚ずつきれいに折るのも大変で、指先は真っ赤。
※用紙の厚さがあるので折りが甘いとすぐに開いてしまうんです。
時間との戦いでした。
「この仕様だと折りは入ってないです」——印刷所からの返答も、今さらどうにもできません。
※ネット印刷だと発注する人の項目選択が全てです。少しでも不安があれば問い合わせしましょう。
営業にクレームをつけても仕事は進まない。
再依頼するには納期が間に合わない。
納期までに仕上げるために、黙々と折り続けるしかありませんでした。
3. なぜ起きたのか:「すじ押し」の意味のズレ
原因はシンプルです。
「すじ押し」の定義と言葉が違うということ。
A:「すじ押し」=折りやすく筋を入れるだけ
B:「背割れ防止加工」=折りパンフレット等で背にすじを入れて折りまで完了
C:「すじ押し+折り」=言葉通り。すじ押し+折り作業を含む
つまり、「すじ押しして2つ折りまで」の状態で戻ってくるだろうって思って選んでも、
“折る”工程が含まれるかどうかはその時選択する仕様によって結果が違うんです。
営業が“確認した”と言っても、
質問内容が「すじ押しと折り、両方込みですか?」でなければ意味がありません。
4. 教訓:「違和感は大切に」
この件で一番痛感したのは、
“違和感”を無視しないことの大切さでした。
あの時、念のため自分で入稿先に確認していたら結果は違ったはずです。
仕様書に書かれた文字よりも、
その行間に潜む“すれ違い”を見抜く力こそ、現場経験の価値。
たとえ相手が「確認した」と言っても、
最後に責任を持つのは、自分の手元で確認する人なんですよね。
5. まとめ:「違和感」は、経験からのサイン
「なんか気になる」「これで本当に大丈夫?」
その小さな違和感は、
これまでの積み重ねが“危険信号”を出してくれているサインです。
だからこそ、現場にいる私たちは、その感覚を信じて動く必要がある場合もある。
印刷物は、形にすれば終わりじゃなく、
「誰かの手に届くまで」が仕事。
違和感を見逃さないことで、
きっと次の1000枚は、もう少し穏やかに折れるはずです。
(もう勘弁なのですが)

