営業の着地点はどこにある? 現場から見えた施工案件の記録

印刷の現場から
この記事は約5分で読めます。
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

「営業って、商品のことを熟知していて頼れる存在」って、そう思っていませんか?
または、電話越しに聞こえてくる営業のやりとりに、思わず「えっ?」と心の中でツッコミたくなること、ありませんか?

暑くなって色んな所でイベントが開催されるのを目にするようになってきました。そんな中で、以前現場で起きた“想定外”の出来事を思い出したので、記録として書いてみることにしました。

◆営業から突然くる「施工案件」、現場はザワつく

営業が持ってくる仕事で、デザインからとなると受注から納品までのスパンも長いです。
特に私の職場はオンデマンド印刷。短納期が基本なので、案件によっては
「え? あの案件まだおわってなかったんですか?」
そう言ってしまう事も多々あります。

この時は偶然複数の施工案件が重なっている時でした。

施工案件という事で工場とのやり取りも、私達オペレーターではなく営業が直接工場の専門部署とやり取りをし、施工部署との調整を進めます。その為、データが入稿されて初めてそんな案件が動いていることを知りました。

「〇〇様の案件で入稿があったのでデータ確認してもらっていいですか?」

「わかりました。……これって最終的に何作るんですか?」

「等身大パネルとガーランド……(以下略)あ、専門部署の〇〇さんには相談済みで、外注に出すやつは僕の方で手配します」

「ふ~ん……。とりあえずデータは指示通りになってますね。リンク切れや文字のエラーも出ないので大丈夫じゃないですか? カットパス入ってないけど」

「ありがとう! 明日工場に入稿してもらうから」

(え? カットパスを付けなくていいの?)
もしかすると、工場のデータ専門部署が対応してくれるのかもしれない――そんな風に思いながら、そのやり取りは終わりました。
※カットパスとは、パネルやシールなどを指定の形に切り抜くため、データ上で設定する“カット用の線”のことです。

そんな事を思いながらも、カットパスが無いことについて何も言わないので、まぁいいのか。そう思ってその日は終わりました。

◆カットパスが無いのでつけてください

その後、私はちょうどお休みの日。代わりに別の人が工場に入稿してくれたのですが――
出勤した日、机の上には書置きがありました。

「工場からカットパスを付ける指示がありました。月曜に再入稿お願いします」

……その書置きを見た私は、しばらく真顔で固まりました。
(えっと……何種類あったっけ……?)

正直営業に悪態をつきたくなりました。

でも、目をそらしても仕事は無くならない。
営業が言っていた事を他の人伝えに聞くと、営業がお客様に塗り足しが〇〇㎜必要と伝えたので、カットするための線を外側に向けて太くして、塗り足しがあるように見せている、と言っていたらしい……。それなら、塗り足しを作ることは簡単か。

そう思いつつデータを修正し始めました。

◆そもそもこの等身大パネル立たないよね?

「足の間は繋げていいって言ってたよ」

そう言われてどのデータの事なのか確認すると、等身大パネルのキャラクターの足の部分が開いており、確かにこのままではパネルを立たせる為の紙足を付けることが出来ないのです。(正確には、付けることは出来るかもしれないが前から見ると変になります)

「確かにこれだと立たないですね……」
「だよね。気づいてなかったから、あいつ(営業)に詰めちゃった」
「ありがとうございます。……でもこのぬりたし部分処理どうしましょう……」
「………」
「………」

引継ぎをしてくれた人と沈黙が流れました。
切らないといけないところには当然ですが塗り足しがいる。でも、足の部分、この部分にぬりたしがあるとキャラクターの足が不自然になる。
どうデータを処理した方が良いのか確認するにも、工場も営業も休み……。

内心頭を抱えながら言いました。

「まぁ。いい感じになるように修正して引継ぎ残しておきます」

そう。面倒な事に、データを修正した次の日私は休日だったんです。
その為疑問に思っても営業には聞けない。
最悪、工場のデータ修正部署が手直ししてくれるといいな……。

その後もそんな所がいくつか出てきましたが、こんな仕上がりになれば大丈夫だろう。
そう思いながらデータの修正を進めました。

◆施工日前日

等身大パネル等大きな什器は、施工部署が工場から現場へ持ち込みとなります。
その為入稿後は、正直その案件の事を忘れていました。

忘れていたある日。

「これって明日持っていかないんですか?」

そんな声が聞こえてきたのです。

(あぁ。そういえば明日が施工だっけ。外注に出してたガーランドか)

ガーランド――よくイベントで見かける、紐に三角形の旗が並んだあの飾りです。
実は仕事で作るのは初めてだったので、どんな仕上がりか気になって見に行ってみると……

「……なんかイメージと違いますね」

私のイメージだと麻の紐や白い紐に三角のフラッグが取り付けられた物でした。
しかし、仕上がってきたものは、平たい少し太めの紐に、キャラクターやロゴが印刷された三角の薄めの生地が、ミシンで縫い付けられたガーランド。

「………………俺もそう思ってたよ……」

ぽつりと営業が呟きました。
その後、そのガーランドを手にしながら営業が何を思っていたのかは分かりません。

そして数秒の沈黙後。

「ごめん! どう袋に入ってたか分からなくなった!」

最後まで、こいつ……って思わせられた案件でした。

◆営業の世界は、着地点が見えないこともある

最後までタイミングが合わない案件というものはあるもので。
施工日当日、やっぱり私はお休みでした。

その為お客様がどんな反応をしたのかは分かりません。

分かりませんが、改めて営業という職業はどんな着地点になるのか分からないまま進むこともあるんだ……。そう思った出来事でした。

そんなことないよ! そう言う営業職の方もいるかもしれません。むしろそうあってほしい。そんな思いを込めながらこの文章を書いています。
営業という職業は、思いもよらない角度から世界をひっくり返すことがある――
そんな現場の一幕でした。
……そしてきっと、明日も私は、営業に振り回されるんでしょうね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました